訣別電文

戦局遂に最期の関頭に直面せり、

十七日夜半を期し小官自ら陣頭に立ち

皇国の必勝と安泰を念願しつつ全員壮烈なる攻撃を敢行する。

敵来攻以来、想像に余る物量的優勢をもって

陸海空より将兵の勇戦は真に鬼神をもなかしむるものがあり

しかれども執拗なる敵の猛攻に将兵相次いで倒れたためにご期待に反し

この要地を敵手にゆだねるやむなきに至れるは、

まことに恐懼に堪えず幾重にもお詫び申し上げます。


今や弾丸尽き水枯れ、

戦い残るもの全員いよいよ最後の敢闘を行わんとするにあたり、

つくづく皇恩のかたじけなさを思い粉骨砕身また悔ゆるところにあらず。

ここに将兵とともに謹んで聖寿の万歳を奉唱しつつ、永久のお別れを申し上げます。

防備上に問題があるとすれば、

それは米国との物量の絶対的な差で、

結局、戦術も対策も施す余地なかりしことなり。

なお、父島、母島等に就いては同地麾下将兵如何なる敵の攻撃をも

断こ破砕しうるを確信するもなにとぞよろしくお願い申し上げます。

終わりに駄作を御笑覧に供す なにとぞ玉斧をこう。


国のために重きつとめを果たし得で 矢弾尽き果て散るぞ悲しき

仇討たで野辺に朽ちじ吾は又 七たび生まれて矛を報らむぞ

           醜草の島にはびこるその時の 国の行く手一途に思う